Steam 過熱水蒸気

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過熱水蒸気とは?

過熱水蒸気とは、100℃以上に過熱した気体状の水(即ち蒸気)のことです。かつて蒸気機関を発明したジェームズ・ワットもこの過熱水蒸気を応用して使用したとされています。その後も火力発電所などタービン(流体がもっているエネルギーを有用な機械的動力に変換する回転式の原動機の総称)を使用しているところでは過熱水蒸気が使用されてきました。近年、過熱水蒸気を使った家庭用調理器が登場して、私たちにもぐっと身近に感じることができるようになりましたが、さらに過熱水蒸気の持つ利点を様々な産業において「非常に有用である」と、見直されるようになってきています。

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過熱水蒸気のメリット

過熱水蒸気のメリットは、主に次の4つに集約できます。

  • 1 伝熱性が極めて高い
  • 2 高い殺菌効果
  • 3 高い乾燥力
  • 4 低酸素

過熱水蒸気の熱伝導メカニズム

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1 伝熱性

伝熱性が極めて高い、というのが過熱水蒸気の最大のメリットです。
熱風などの場合、熱の伝導は、主に「対流伝熱」によって行われます。これに対して、過熱水蒸気の場合は、この「対流伝熱」に加え、「輻射伝熱」及び「凝縮伝熱」の複合効果で伝熱が行われます。さらに、3つ目の「凝縮伝熱」の熱伝達能力が他の2つに比べて極めて高いのです。このため、熱風などに比べ、伝熱性が極めて高く、下表のように(温度にもよりますが)、10倍前後にもなります。

2 殺菌効果

この基本特性の応用であり、急速過熱によりウィルスなどを短時間で死滅させることができます。 食品などの場合、過熱時間が長いと食品が変質してしまうことがありますので、短時間で殺菌を終わらせることは重要なポイントです。この点で、過熱水蒸気は大きな力を発揮します。

3 乾燥力

“水”を使って乾燥させる、というのは奇異に聞こえますが、約170℃以上では過熱水蒸気の蒸発速度が空気よりも速く、熱風よりも短時間で乾燥できます。

4 低酸素

他の3つとは異なる現象ですが、要するに装置の中で過熱水蒸気を発生させると、「H2O」ガスで装置内が満たされ、空気が排除されますので、無酸素あるいは低酸素状態になるということです。従って、高温にはしたいが酸化は防ぎたい、といった用途、例えば調理や燻蒸などに有効です。

過熱水蒸気と熱量過熱のエネルギー比較

温度 過熱水蒸気 熱風過熱(過熱空気) 熱容量比較
150℃ 336kcal/m3 26kcal/m3 13倍
230℃ 298kcal/m3 35kcal/m3 8倍
300℃ 275kcal/m3 41kcal/m3 6.5倍

主な用途

アイコン 殺菌

穀物などの食材の表面に付着している菌を短時間(数秒~0コンマ数秒)で殺菌ができ、食材の賞味期限を格段に延ばすことが可能になります。

アイコン 乾燥

含水率の高い食品や汚泥などの廃棄物の乾燥処理に使用できます。過熱水蒸気は熱伝導率が高いため、熱風乾燥に比べ、短時間で乾燥できます。

アイコン 食品微生物検査

殆どの悪性菌は高温処理することで殺菌が可能で、高温となった水蒸気をぶつけることで、瞬時に殺菌乾燥を行います。

米ぬかの粉末殺菌実験

米ぬかを過熱水蒸気発生装置と縦型のアプリケーションを使用して過熱殺菌処理を行う。処理設定は出口温度400℃、炉内温度470℃、スプレー量23ℓ/hで2パス処理。短時間での殺菌処理となったが、色具合もよく正常に殺菌することが出来た。過熱処理済みの米ぬかはハイスピードミルにて粉砕処理を行い粉末化することに成功した。水分率を測定したところ、8.6%という結果になった。当初の目的通り色合いの良い綺麗な粉末が完成した。

食品微生物検査

検査 殺菌前 殺菌後
一般生菌 2,500,000個/g 470個/g
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処理前
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過熱処理後
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粉砕処理後
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過熱処理後の水分量測定(8.6%)
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